「おはぎ」と「ぼたもち」は基本的に同じ和菓子を指しますが、古来からの風習において明確な使い分けが存在します。春のお彼岸(3月)に供えられるものは、春に咲く「牡丹(ボタン)」に見立てて「ぼたもち(牡丹餅)」と呼ばれ、秋のお彼岸(9月)に供えられるものは、秋の七草である「萩(ハギ)」の咲き乱れる様子に見立てて「おはぎ(御萩)」と呼ばれてきました。
この呼び名の変化に伴い、古くから使用する「あんこの種類」にも合理的な違いが設けられていました。小豆の収穫時期は秋です。そのため、秋のお彼岸に作るおはぎには、獲れたてで皮まで柔らかい新小豆を皮ごとすり潰した「つぶあん」が使われ、小豆の粒を萩の花の咲きこぼれる姿になぞらえました。一方、春を越して皮が硬くなった小豆を使う春のぼたもちには、皮を取り除いて滑らかに仕上げた「こしあん」を用いるのが伝統的な職人の流儀でした。現代では製餡技術や流通が進化し、通年で上質な小豆が手に入るため厳密な区別は薄れつつありますが、季節の情趣を楽しむ教養として知っておくと和菓子作りの奥行きが深まります。