なぜ日本女子は、五輪という極限の舞台でこれほどまでに強さを発揮できたのでしょうか。その背景には、世界で最も過酷と呼ばれるミラノコルティナ冬季五輪日本代表選考基準の存在があります。全日本選手権での一発勝負だけでなく、グランプリシリーズの成績、国際大会での獲得スコア、世界ランキングに至るまで複合的に評価される選考システムを勝ち抜いた3選手だからこそ、大舞台の重圧に屈しない胆力が備わっていました。
銀メダルを獲得した坂本花織選手は、今大会に向けてフリーの演技構成を研ぎ澄ましてきました。坂本花織五輪フリー演技構成とメダル候補として海外メディアからも筆頭に挙げられていた彼女の強みは、男子顔負けの跳躍幅を誇るダブルアクセルと、スピードに乗ったまま跳ぶ3回転フリップ+3回転トウループです。本番後のミックスゾーンで坂本選手が見せたのは、安堵と悔しさが入り混じった表情でした。「金を目指してやってきたので悔しさはあるけれど、自分の滑りは出し切れた」と語る瞳には、3大会連続出場を果たした大黒柱としての矜持が宿っていました。
一方、サプライズとも言える快進撃を見せたのが中井亜美選手です。大舞台で決めた3回転アクセルは、踏み切りから着氷後の流れまで完璧であり、審判団から高いGOEを引き出しました。さらに、惜しくもメダルを逃したものの高い評価を得た千葉百音メダル獲得の可能性と評価についても見過ごせません。千葉選手の滑りは、ジャンプの難易度競争に終始しがちな女子シングルにおいて、「氷に吸い付くようなスケーティングクオリティ」というフィギュアスケート本来の美しさをジャッジに再認識させ、PCSで海外の有力選手を凌駕しました。この三者三様の強みが噛み合ったことこそ、日本勢の層の厚さの証明です。