植物学的に見ると、ネギ(Allium fistulosum)はヒガンバナ科ネギ属に分類される多年草だ。近代植物分類学の父カール・フォン・リンネが体系化したこの属には、タマネギやニンニク、アサツキなど香気成分を宿す植物が連なる。日本においては「日本の植物学の父」と称される牧野富太郎が各地の在来種や栽培変種をつぶさに観察し、暮らしに根ざした植物誌を遺した。
ボタニカル・植物民俗学の観点からも、あのネギ坊主は単なる野菜の花以上の存在だった。古来、ネギ特有の強い刺激臭(アリシン)と球状の特異な花姿は、邪気を払い魔を退ける力があると信じられてきた。神社の擬宝珠(ぎぼし)の意匠や、地方の年中行事における魔除けの風習にもその名残が見られる。薬効で身体を守り、花のかたちで邪気を祓う。人々の生活と精神世界の双方に深く寄り添ってきた歴史がある。