世間を最も驚かせたのは、被害者である柴田英嗣のリアクションでした。妻を友人に寝取られた形となった柴田でしたが、報道陣に対する直撃取材やその後のテレビ出演で、加藤に対する激しい憎悪を口にすることは一切ありませんでした。
柴田は記者団のカメラを前に「加藤ちゃんも悪気があってやったわけじゃない」「オレにも責任がある。夫婦関係はすでに破綻していたから」「子供に罪はない。加藤ちゃんにはしっかり音楽を続けてもらって、子供を支えてほしい」と、ユーモアを交えながら加藤を気遣う言葉すら口にしました。この常軌を逸した器の大きさが、ネット上で「アンタッチャブル柴田の神対応」として爆発的な称賛を浴びることになります。
しかし、この対応の背景には柴田自身が背負っていた十字架が存在します。柴田は2010年1月から約1年間の芸能活動休止を経験しています。その休養の引き金となったのは、柴田自身の女性トラブルや浮気問題でした。元妻との信頼関係はその時点で既に崩壊しており、長年の家庭内別居を経て2015年5月に至った離婚理由は、加藤の介入以前に「夫婦としての破綻」が根本原因でした。
柴田自身が公の場で語った「オレが元奥さんを大事にできていなかったツケが回ってきた」という生々しい独白は、自らの過ちを認めているからこその冷静な境界線(バウンダリー)の引き方でした。怒りに身を任せて相手を攻撃すれば、元妻のもとに残された実子や、新たに生まれてくる命が世間の好奇の目に晒される――その二次被害を食い止めるための、命がけの防衛策が「神対応」の正体だったのです。