手作りパイにおける最大の不満点は、「冷めると底がしんなりして油っぽくなる」現象です。製菓科学の観点から検証すると、この失敗には2つの明確な原因が存在します。
第1の要因は、バナナから染み出す水分(ドリップ)です。加熱されたバナナは細胞壁が壊れ、大量の水分を放出します。これが直接下側のパイ生地に触れると、グルテンが水分を吸って生焼けのような重い食感に逆戻りしてしまいます。これを完全に遮断する裏技が「パイシートの底面に少量のパン粉、または砕いたビスケットを敷く」というプロの手法です。わずか小さじ1杯の粉末が余分な果汁をキャッチし、生地を水分から完全に隔離します。
第2の要因は、焼き上がり直後の蒸気こもりです。焼き立てをすぐに平らな皿に置くと、パイ自身の蒸気で底面がふやけてしまいます。取り出したら直ちにケーキクーラー(網)の上に移し、下部から空気を逃すことで、翌日になっても心地よいサクサク感が持続します。
なお、アレルギー対策や手間の削減として注目されるチョコバナナパイ 卵なしでの仕上がりについてですが、生地の膨らみ自体に卵は一切影響しません。ツヤ出し用の塗り卵(ドリュール)を使わない場合でも、牛乳やみりんをハケで薄く塗るだけで美しい照りと焼き色が十分に出せます。