洗濯後のTシャツが乾いているときは無臭なのに、水分を含んだ瞬間に悪臭を放ち始める現象には明確なメカニズムが存在します。大手日用品メーカーの研究発表や繊維衛生学の報告によると、悪臭の直接的な原因物質はモラクセラ菌(Moraxella osloensis)が皮脂汚れや水分を分解する際に生成する「4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H)」という不飽和脂肪酸です。
モラクセラ菌は健康な人の皮膚や空気中に普通に存在する常在菌の一種ですが、驚異的な耐久力を持っています。増殖する過程で繊維表面に「バイオフィルム」と呼ばれる粘着性の多糖類バリアを形成するため、20℃前後の冷水と一般的な弱アルカリ性・中性洗剤による標準コースでは、菌本体やバリアを完全に洗い流すことができません。
その結果、見た目は綺麗に洗い上がっていても、繊維の奥底には休眠状態の菌とバイオフィルムが残存します。着用後に体温で温められ、汗などの水分が供給された瞬間、爆発的に活性化してあの特有の生乾き臭を放つのです。このサイクルを断ち切るには、菌の細胞膜とバイオフィルムを物理的・化学的に破壊するアプローチが欠かせません。