小作ののれんをくぐる客の約7割が注文するのが、看板料理であるかぼちゃほうとうです。一部のグルメサイトやSNSでは「観光客向けの甘すぎる味付けではないか」「野菜が多すぎて途中で飽きる」といった辛口な意見も散見されます。しかし、その味覚設計を分解すると、長年支持される必然性が浮き彫りになります。
小作のスープベースは、椎茸、昆布、煮干しから丁寧にとった澄んだ和風出汁に、甲州特有のやや辛口な米麹味噌と麦麹味噌を黄金比でブレンドしています。ここに、箸で容易に崩れるほど柔らかく煮込まれた巨大なカボチャが溶け出すことで、味噌の塩角(えんかく)が取れ、重層的なコクと自然な甘みが完成します。麺は手打ちの風合いを残した強いコシがあり、煮崩れることなくトロトロのスープをしっかりと持ち上げます。
脇を固める具材の存在感も見逃せません。山菜、里芋、椎茸、にんじん、ごぼう、ネギ、油揚げが鉄鍋の底までぎっしりと敷き詰められており、一杯で成人男性の1日分に迫る食物繊維と根菜を摂取できる構成です。卓上に常備されている特製調味料「すりだね」(赤唐辛子やゴマ、油などを練り上げた山梨独自の辛味調味料)を途中で投入することで、前半のまろやかな甘味から、後半はキレのある辛口鍋へと劇的な味変を遂げます。
ほうとう以外のサイドメニューにおいて、地元客やリピーターから絶大な支持を得ているのが甲州名物の馬刺しと鳥もつ煮です。
小作の馬刺しは、冷凍焼けを感じさせない鮮やかな赤身が特徴で、ネットの口コミでも「筋がなく驚くほど柔らかい」「生姜醤油とにんにくで食べると日本酒が止まらない」と極めて高い評価を獲得しています。また、甘辛い醤油タレで照り煮にされた鳥もつ煮は、砂肝のコリコリ感とレバーの濃厚さが凝縮されており、熱々のほうとうが着丼するまでの待機時間を埋める最高のアペタイザーとして機能しています。
2026年時点の主な提供価格帯は、かぼちゃほうとうが1,400円〜1,500円前後、豚肉ほうとうが1,700円〜1,800円前後、馬刺しが1,300円〜1,500円前後で推移しており、素材のボリュームと手作業の仕込み工程を考慮すれば、極めて妥当な価格設定と言えます。