そもそも「潮時」という言葉はどこから生まれたのか。そのルーツは、古来より海とともに生きてきた日本の漁師や船乗りの知恵にさかのぼる。
岩波書店が発行する日本を代表する国語辞典『広辞苑』を開くと、潮時の第一義には「潮が満ちたり引いたりする時」とある。そして第二義として「物事をするのに一番良い時期。好機。ちょうど良い時」と明記されている。港を出る船は、潮の流れを味方にしなければ荒波を乗り越えられない。満潮や干潮の変わり目、つまり最も航行に適したタイミングを待つことこそが「潮時を待つ」の本質であった。
したがって、「潮時」は本来、未来に向けた挑戦のための「待ち時間」であり、波に乗るための「勝負の瞬間」を指す。決して過去を切り捨てて撤退するための免罪符ではないのだ。