事故現場を取り巻く情勢は、時間の経過とともに悪化の一途をたどった。事故を起こした東京電力の福島第一原発からは容赦なく放射性物質が放出され、病院周辺の放射線量は急上昇。避難指揮をとるべき行政機能も混乱を極め、現場への情報伝達は完全に途絶していた。
搬送バスの手配は遅れに遅れ、ようやく到着したバスも患者をピストン輸送するにはあまりに数が不足していた。暖房もない極寒の車内で長時間揺られ、移送先に到着した時にはすでに心肺停止状態となっていた患者も少なくない。事故対応の初期において、プラントの収束作業に追われる東京電力と、住民や入院患者の安全確保を担う行政側との連携欠如が、最悪の医療崩壊を引き起こす決定打となった。