「座布団の舞」が見た目の華やかさとは裏腹に厳しく規制される最大の理由は、その物理的危険性にあります。国技館の枡席で用いられる座布団は一般的な薄いクッションとは異なり、座り心地を保つため硬い芯材と厚みのある綿が詰められており、1枚あたりの重量はおよそ1.2kg〜1.5kgに達します。
すり鉢状になった館内の上段枡席から時速数十キロで飛来する座布団は、前列の観客、高齢者、審判委員(親方衆)、土俵下の力士や行司にとって重大な凶器となり得ます。過去には、著名人や観客に直撃して眼鏡が破損したり、頸椎捻挫などの負傷事故が複数件報告されてきました。
こうした危険性を重く見た日本相撲協会は、2008年(平成20年)11月の九州場所において、2人分の座布団を中央で縫い合わせた「2枚連結座布団」を導入しました。1人が座った状態ではもう1枚を持ち上げることができず、1人で投げようとしても重量が倍増(約2.5kg以上)してバランスを崩すため遠くへ飛ばないという画期的な工夫です。この物理的対策により、福岡をはじめとする本場所での座布団投擲は激減しました。