なぜ飛田新地では、公道上であるにもかかわらずこれほどまでに徹底した撮影禁止ルールが敷かれているのでしょうか。その根底には、街の存立基盤とそこで働く女性たちを保護するための切実な防衛本能が存在します。
第一の理由は、「キャスト(従業員女性)のプライバシーと生活の完全防護」です。飛田新地で働く女性の多くは、昼間の本職、家庭環境、育児、あるいは家族への配慮から、自らの身元やここでの就労を周囲に完全に秘匿しています。万が一にも顔写真や姿態がインターネット上に拡散されれば、それは個人の尊厳を破壊し、家庭の崩壊や就職・将来への壊滅的な被害を直接的にもたらします。街を統括する「飛田新地料理組合」にとって、彼女たちのプライバシーを死守することは雇用と事業継続における絶対の責務です。
第二に、「行政・警察との合意形成に基づく地域秩序の維持」が挙げられます。飛田新地は風営法上の性風俗店ではなく、名目上は「料亭」として営業し、店主と客の「自由恋愛」という建前のもとで歴史的に存続してきたグレーゾーン産業です。この繊細なバランスを保つためには、暴力団排除の徹底とともに、地域住民や一般社会に対する徹底したトラブル防止策が不可欠となります。観光地化による無秩序な撮影やネットへの露出は、街全体の存続を揺るがす最大の脅威として認識されているのです。