『北の国から』の劇伴といえば、さだまさしが手掛けたメインテーマのハミングが広く知られていますが、ドラマの構造的転換点や登場人物の感情が限界に達する劇的局面において、決定打となったのは中島みゆきの挿入歌でした。
とりわけファンの間で語り草となっているのが、『北の国から '92巣立ち』における『ファイト!』の挿入場面です。東京で挫折し荒れた生活を送る純、そして旭川の看護学校で過酷な実習と孤独に耐えながら夜間病院で働く蛍。泥臭く生きる若者たちの苦悩と、理不尽な世の中に抗おうとする姿に重ねて流れた「ファイト! 闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう」というフレーズは、視聴者の涙を絞り出させました。当時の演出意図について関係者は「言葉で説明し尽くせない若者の劣等感と生のエネルギーを、中島みゆきの歌詩だけが完璧に代弁できた」と振り返っています。
また、初期シリーズやスペシャル版で効果的に用いられた『異国』も、厳しい北海道の冬景色と、都会から隔絶された家族の孤独感を鮮烈に描き出しました。吹き荒れる地吹雪の中、寒村に取り残された人間の切なさを歌い上げる哀愁に満ちたメロディは、倉本聰が描くリアリズム文学の世界観と完璧な融合を果たしています。