田中角栄の生涯を語るうえで避けて通れないのが、1976年に発覚した「ロッキード事件」です。米航空機大手ロッキード社の旅客機導入をめぐり、5億円の受託収賄罪に問われ逮捕・起訴された事件は、日本中に前代未聞の衝撃を与えました。
事件の背景を巡っては、米国のエネルギー戦略や冷戦構造下の国際政治力学が関与したとする陰謀論や地政学的アプローチも含め、現代に至るまで多くの研究者やジャーナリストが検証を重ねています。裁判は角栄本人の死去によって公訴棄却となりましたが、実刑判決を受けた後も「闇将軍」として政界を操り続けた姿は、金権政治の構造的病理として国内外から厳しい批判を浴びました。
角栄の手腕は、豪雪地帯にトンネルを開通させ、水道を引き、地方住民の生活を劇的に向上させた「救世主」としての側面を持つ一方、政治とカネの不透明な癒着を固定化させたという二面性を抱えています。この光と影の濃さこそが、角栄の評価を現在も二分する要因です。