お酒を飲んですぐに皮膚が紅潮する現象は、医学用語でフラッシング反応(顔が赤くなる現象)と呼ばれます。この反応が起こる背景には、東アジア人に特有の遺伝的要因が存在します。
体内に取り込まれたエタノールは、まず肝臓で「アセトアルデヒド」という極めて毒性の高い物質に分解されます。アセトアルデヒドはWHO(世界保健機関)の国際がん研究機関(IARC)によってグループ1の「ヒトに対する発がん性がある物質」に分類されている劇物です。この毒素を無毒な酢酸に分解する主役が「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」です。
日本人を含む東アジア人の遺伝子調査において、このALDH2遺伝子欠損(不活性型または低活性型)を持つ人の割合は約40〜44%に達します。欧米人にはほとんど見られないこの遺伝的変異を持つ人は、アセトアルデヒドが体内に長時間滞留するため、血管が拡張して顔や首筋が真っ赤になり、激しい動悸や頭痛に襲われます。
遺伝的にALDH2の働きが弱い人が無理をして飲酒習慣を続けると、アセトアルデヒドが直接口腔や食道粘膜に触れ続けることになり、活性型の人と比較して食道がんの発生リスクが約6〜10倍以上、多量飲酒が重なると数十倍にまで跳ね上がることが東京大学や国立がん研究センターなどの研究で立証されています。赤くなるのは「身体からの明確な拒絶サイン」であり、体質的に飲んではいけない何よりの証拠です。