マクドナルドJR新宿南口店の営業終了に伴い、日本中の注目をさらったのが、わずか数十メートル先の並びに店舗を構えるバーガーキング新宿南口店のゲリラ的アプローチでした。
店頭に掲出されたポスターには、「22年間たくさんのハッピーをありがとう」「私たちの2軒隣で、ずっとたくさんの元気をくれた」といった温かい惜別のメッセージが綴られていました。一見すると、長年切磋琢磨したライバルへ敬意を表する「美しい友情の物語」に見えましたが、各行の最初の文字を上から下へ縦読みすると、「私たちの勝チ」という強烈な勝利宣言が浮かび上がる仕掛けになっていたのです。
このプロモーションは、マーケティング心理学において「認知的不協和」と「サプライズ効果」を高度に突いた施策と分析されます。情緒的な感動ムードを演出しながら、裏に潜ませた毒のあるユーモアによってSNSでの爆発的な拡散(バズ)を生み出しました。欧米ではペプシとコカ・コーラ、バーガーキングとマクドナルドの間で日常的に行われる比較広告・ディスり合い文化(アンブッシュ・マーケティング)を、縦読みという日本固有のネットカルチャーに落とし込んだ極めて巧妙な戦略でした。
この演出には「ブラックジョークとして痛快」「ライバル関係のプロレスとして最高」と称賛する声が集まった一方で、「30年地域を支えた老舗へのリスペクトに欠けるのではないか」という心理的バウンダリー(境界線)をめぐる議論も巻き起こり、現在に至るまで企業プロモーションの境界線を考察する代表的な事例として研究されています。