なぜ二つの言葉はごちゃ混ぜにされやすいのだろうか。それは、どちらも「親から子へ受け継がれる生命の設計図」という文脈で語られるからだ。だが、両者の決定的な差異は「ハードウェアか、ソフトウェアか」という点に集約される。
DNA(デオキシリボ核酸)は、リン酸と糖と塩基から構成される長い化学物質そのものを指す。二重らせん構造をとるその鎖は、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4種類の化学文字が果てしなく並んだ「物理的なひも」だ。
一方、遺伝子とは、その膨大なDNAの塩基配列の中で「特定のタンパク質をつくれ」という具体的な指示が書かれた機能的なブロック領域を指す。図書館で例えるなら、DNAは本を構成する「用紙とインク」であり、遺伝子はそこに印刷された「物語や料理のレシピ」だ。用紙やインクが無ければ本は存在できないが、用紙そのものがレシピというわけではない。