歓楽街の喧騒から一本入った細い路地。雑居ビルの2階に灯る黄色い看板は、決して派手ではない。むしろ一見客を拒むかのような重厚なベルベットのカーテンが、外の世界と店内をきっちりと遮断している。
「最初は入るのに30分くらいビルの前を行ったり来たりしました」
そう苦笑いするのは、都内のスタートアップで働く27歳の男性だ。週に2日はここに顔を出すという。彼のようなZ世代やミレニアル世代の姿が、カウンターの半分を埋める光景は珍しくなくなった。かつて「中高年男性の聖域」と見なされていたスナックは、いまやデジタルネイティブたちが人間関係の摩擦を恐れずに飛び込める、数少ないリアルな社交場へと変貌を遂げている。
SNSのように「いいね!」の数を気にする必要もなければ、チャットツールのように即レスを求められるプレッシャーもない。ただそこに座り、酒を飲み、誰かの歌を聴く。その無防備な時間が、過剰接続社会に生きる人々の神経をほどいていく。