兵庫9区の当落の理由を語る上で欠かせないのが、選挙区内の構造的な地理的断絶です。明石海峡を挟んだ両地域は、経済基盤も有権者の人口動態も全く異なる世界を形成しています。
明石市は、前市長時代から続く手厚い子育て支援策によって近隣の神戸市や大阪市からのファミリー層流入が続き、平均年齢が若く、浮動票・無党派層の比率が極めて高い都市です。ここでは「政党の名前」よりも「生活実感」や「政治家のモラル」が厳しく問われます。街頭インタビューでも、30代の会社員女性は「子どもの教育費負担が重い中で、政治とお金の問題に納得のいく説明がない政治家には投票できない」と率直に胸中を明かしていました。
対照的に淡路島は、タマネギ栽培や水産業、観光業、建設業など地域社会に根ざした産業が中心であり、商工会や農協、漁協といった強固な職能団体が票の受け皿として機能しています。島民にとって西村氏は「地元から輩出した代議士」であり、道路整備や港湾改修、離島航路の補助など、国政パイプの太さは生活の生命線に直結します。地元漁協の幹部は「批判があるのは承知しているが、島のインフラ整備や災害復旧を誰が国会で具体的に動かせるかを考えれば、答えは自ずと決まる」と語りました。
この明石市の「都市型生活者心理」と淡路島の「地域共同体論理」の乖離こそが、各社情勢調査で「大接戦」「予断を許さない」と報じられた本質的な要因でした。