今井美樹と布袋寅泰の出会いは、1980年代後半にまで遡ります。当時、布袋寅泰は「学園祭の女王」として一世を風靡したロックシンガー・山下久美子と1986年に結婚しており、音楽業界きっての「おしどりロック夫婦」として知られていました。一方の今井美樹は、モデルから女優、そして透明感あふれる歌声を持つシンガーへと駆け上がっていた時期であり、プライベートでは山下久美子を敬愛する大親友という間柄でした。
山下の自宅に今井が日常的に出入りし、恋の悩みや仕事の相談を打ち明けるほどの蜜月関係。しかし、その信頼関係に亀裂が入るきっかけとなったのが、音楽面での布袋と今井の急接近でした。今井は自身の楽曲制作において、布袋のエッジの効いたメロディとプロデュース力を強く求め、1990年代初頭から本格的なコラボレーションが始まります。スタジオワークを重ねる過程で、2人の距離は急速に縮まっていきました。
この禁断の転換点について、元妻である山下久美子が2002年に上梓した自伝的手記『ある愛の詩』(幻冬舎)には、胸を抉るような生々しい筆致で当時の様子が記録されています。ある夜、自宅にかかってきた今井からの電話で放たれた「彼のこと、奪わないでね」という言葉、布袋の心が次第に自分から離れていく気配、そして夫の車から見覚えのある香水の匂いが漂った瞬間など、かつて信じ切っていた親友と夫の裏切りに直面した苦悩が詳細に綴られました。
一方の布袋寅泰も、2006年の自叙伝『秘密』において、山下との夫婦生活が破綻していったプロセスと今井への抗えない傾倒について率直に触れています。山下との間には長年すれ違いが生じており、すでに修復不可能な段階に達していたと主張する声もあるものの、世間は「親友から夫を奪った略奪愛」として今井に激しいバッシングを浴びせました。1997年11月に布袋と山下の離婚が正式に成立し、それから約1年半後の1999年6月に今井美樹と布袋寅泰は入籍を果たします。当時、記名会見で今井が見せた毅然とした表情の裏には、世論の猛反発を覚悟の上で下した重い決断の影が色濃く漂っていました。