ブロンズ像そのものの素晴らしさもさることながら、特筆すべきはその設置場所の特異性にある。松の巨木が鬱蒼と茂る神社の神域を抜け、視界が急に開けると、白砂が美しい十和田湖御前ヶ浜が広がる。乙女の像はこの浜辺の先端、湖水が足元を洗うかのような絶妙な位置に据えられている。
光太郎は設置場所の選定にあたり、幾度も現地を検分した。人工的な台座で高く掲げることを嫌い、湖を訪れた人間と同じ目線、同じ大地に立つことを強く求めたという。背景に広がるのは、季節ごとに表情を変える御倉山と御山半島の雄大な稜線だ。秋には全山が燃えるような紅葉に包まれ、冬には白銀の氷雪がブロンズの肌を際立たせる。
日本の近代彫刻史を振り返っても、これほど自然環境と造形物が不可分に結びついた屋外作品は極めて稀だ。彫刻が風景を完成させ、風景が彫刻に息吹を吹き込む。この計算され尽くした空間配置にこそ、巨匠の類まれな造形感覚が宿っている。