Creepy Nutsが手掛けた「オトノケ」がなぜここまでリスナーの脳裏にこびりつくのか。その真相は、作詞を手掛けたR-指定による原作漫画『ダンダダン』(龍幸伸・著)への恐ろしいまでの読解力と、自身の作家人生を重ね合わせた執念にあります。公式発表資料やメディアインタビューにおいて、R-指定は制作当初から「他者との融合・憑依」というテーマを核に据えていたことを明かしています。
タイトルの「オトノケ」は、古来より人間に仇をなし、時に不思議な力を宿らせる「物の怪(もののけ)」に由来しています。そこに「音楽の音」を掛け合わせ、目に見えない音の波動が人間の耳から脳内へと侵入し、精神を支配していく様を「音の怪(オトノケ)」と定義づけました。アニメ『ダンダダン』では、霊媒師家系の女子高生・綾瀬桃とオカルトマニアのオカルン(高倉健)が、ターボババアやセルポ星人といった怪異・地球外生命体と遭遇し、その特異な力をその身に宿しながら戦います。この「自分以外の怪異が肉体に侵入して同化する感覚」を、R-指定は自身がリリックやビートという「音」に取り憑かれてトランス状態に陥る創作プロセスと直結させたのです。
作曲を担当したDJ松永が紡ぎ出すトラックは、近年の世界的なクラブトレンドであるジャージークラブの性急なキックパターンを基調に、不穏なベースラインと奇怪な電子音が絡み合う構成です。音楽業界関係者の間でも「アニメタイアップでありながら、アングラなヒップホップとクラブミュージックの最前線を一切の妥協なく融合させた劇薬」として極めて高い評価を獲得しました。