『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』のクライマックスを巡っては、放送当時から熱い議論が交わされてきました。物語の第2幕、5年の歳月が流れた東京で、介護施設で理不尽な労働環境に耐え続ける音と、祖父の死や震災の爪痕を背負い一時は冷徹な詐欺まがいの営業に身を落としながらも立ち直った練。最終回に向けて描かれたのは、恋の駆け引きではなく、「理不尽な世界で、誰かを想いながら善良に生きることの過酷さと尊さ」でした。
最終回(第10話)の核心となるのは、音の元婚約者である井吹朝陽(西島隆弘)の存在です。朝陽は音を手放す決断を下す際、「僕を好きになりなよ。僕を選べば楽だよ」という以前の言葉を覆し、「もう君のこと好きじゃない」「僕は君がいなくても前に進める。君も自分の本当の気持ちから逃げないで」と、あえて悪者を演じて音の背中を押しました。この朝陽の決断こそが、本作における極めて高潔な「他者愛の昇華」として語り継がれています。
そして物語のラストシーン、北海道へと戻っていた音の元へ、練がトラックを走らせて現れます。海沿いの寂れたファミリーレストランで向き合うふたり。ファミレスの伝票の裏に走り書きされたお互いの想いや、かつて音の亡き母が遺した手紙の言葉が交錯します。別れ際、トラックの運転席と路面で交わされた会話の果てに、ふたりは劇的なキスを交わすわけでも、同棲や結婚を約束するわけでもありません。「杉原さん、またね」「曽田さん、またね」と互いを名字で呼び合い、それぞれの生活の場へと戻っていきます。
この結末について、「いつ恋の最終回結末の真相」は明確です。ふたりは互いを誰よりも深く愛しながらも、東京での生活や家族への責任、自らの足で生きていく現実を放棄しませんでした。坂元裕二が描いたのは、相手に縋り付いて現実から逃避する安易なハッピーエンドではなく、「あなたが存在してくれるだけで、この冷たい世界を生きていける」という、魂の深い結びつきでした。恋愛の成就を超越したこの着地点こそが、視聴者の涙腺を激しく揺さぶり続ける理由です。