電子レンジの設置時、多くの方が抱く「電子レンジのアース線はつけないままでも普通に温められるのではないか」という疑問。結論から言えば、アース線を繋がなくても通電し、食品を加熱する機能自体は問題なく作動します。しかし、それは「安全が担保されている」ことと同義ではありません。
そもそもアース線の役割は感電防止にあります。電子レンジは内部で高周波(マイクロ波)を発生させるために高電圧トランスやマグネトロンといった高出力部品を駆動させています。万が一、内部の配線が劣化したり、吹きこぼれや水蒸気によって内部基板が湿気を帯びて漏電が発生した場合、アース線が繋がれていれば電気は抵抗値の低いアース線を通って安全に大地(地面)へと逃げていきます。
では、アース線をつながないとどうなるのでしょうか。逃げ場を失った漏れ電流は、電子レンジの金属製外枠(シャーシ)に帯電し続けます。その状態のレンジに濡れた手で触れた瞬間、人体がアースの代わりとなり、数ミリ秒で激しい電流が体内を駆け抜ける「人体アース」の感電事故が発生します。特に家庭用の単相100Vであっても、濡れた状態での感電は心室細動を引き起こす危険性があります。
また、分電盤にある電子レンジの漏電遮断器が作動する前に人体へ電気が流れてしまうケースや、微小な漏電スパークが長期間放置されることで周囲の埃に引火するトラッキング火災の原因にもなり得ます。「動くから大丈夫」という認識は、万が一の防護柵を自ら取り外して運用している状態に他なりません。