皇太子の命綱を握るラスプーチンの影響力は、次第に宗教の枠を超えてロシア帝国の国政・人事権にまで及び始めました。特に1914年に第一次世界大戦が勃発し、ニコライ2世が総司令官として前線に赴くと、首都の留守を預かるアレクサンドラ皇后を通じてラスプーチンが実質的な影の宰相として君臨します。
彼の手紙一本で閣僚や軍の司令官が次々と更迭・任命され、有能な高官が排除されてラスプーチンに阿諛追従する無能な人物ばかりが登用されました。この「閣僚の目まぐるしい交代劇」は帝政の統治能力を著しく麻痺させ、軍事的混乱と国民の困窮を招く直接的な引き金となったのです。
さらに、宮廷の外でのラスプーチンの私生活は放蕩そのものでした。連夜のように高級レストランで浴びるほど酒を飲み、貴族の女性信者たちと狂乱の宴を繰り広げたという逸話は数知れません。彼のスキャンダラスな噂は風刺画や地下出版物を通じてロシア全土に拡散し、「ドイツ出身の皇后と怪僧が国家を売り渡している」という不満が爆発寸前にまで高まっていきました。