一方、現代のヒット前線を華やかに彩っているのが、森下suuが手がける『ゆびさきと恋々』(講談社)だ。耳が聞こえない女子大生・雪と、世界を旅する大学の先輩・逸臣の恋模様を描いた本作は、洗練されたビジュアルと圧倒的な透明感で10代から30代を中心に絶大な人気を誇る。
胸が高鳴る王道の恋愛漫画でありながら、ろう者の日常生活や独特の感覚を自然体かつ丁寧にすくい上げている点がきわめて画期的だ。「音のない世界」をハンデや悲劇として描くのではなく、彼女自身が生きる美しく愛おしい世界観として画面上に提示する演出の手腕は見事の一言に尽きる。相手の手にそっと触れて手話で思いを伝えるしぐさのすべてが、読む者の胸を締め付けるほどのときめきを創出している。