これほどの強靭さを誇るアムールトラですが、20世紀半ばには人間の手によって壊滅的な打撃を受けました。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで長年「絶滅危惧種(Endangered)」に指定され続けている背景には、根深い歴史的要因が存在します。
1930年代から1940年代にかけて、毛皮目的の商業乱獲や漢方薬の原材料としての骨の密猟、さらに生息地である森林の大規模伐採が激増。一時は野生個体数がわずか30〜40頭程度まで激減し、絶滅の淵へと追い詰められました。ロシア政府による厳格な保護法制定や国際的な取引禁止措置により最悪の危機を脱したものの、遺伝的多様性の低下という深刻なボトルネック課題は今なお残されています。
ロシア天然資源環境省および中露共同保護プロジェクトの発表によると、2026年現在の野生生息数は約750頭前後まで回復を見せています。中国側の「東北虎豹国家公園」の整備拡大や、国境を越えた「生態回廊(コリドー)」の設置により、個体群の移動と遺伝的交流が促進されています。しかし、森林火災の増加や獲物となる有蹄類の減少、依然として後を絶たない闇密猟など、予断を許さない状況が続いています。