エヴァンゲリオンというコンテンツに対する受け手の熱量は、完結から時間が経過した現在も異常な高さを維持しています。大手SNSや専門コミュニティ、知恵袋等の言説空間を分析すると、ファンの心理は大きく2つの陣営に二極化していることが分かります。
第1の潮流は、「庵野秀明が手掛けないエヴァなどエヴァではない」と言い切る作家絶対主義のファン層です。リアルタイムで旧劇場版の熱狂と挫折を経験してきた40代〜50代を中心に、エヴァンゲリオンの魅力は庵野氏の剥き出しの狂気、私小説的な独白、そして作家の肉体性そのものにあったと捉える向きは根強く残っています。この層からは「別の人間が綺麗に作ったエヴァを見せられても、それは精巧な二次創作に過ぎない」という厳しい視線が注がれています。
対照的な第2の潮流は、20代〜30代のデジタルネイティブ層を中心とするIPワールド拡張肯定派です。『機動戦士ガンダム』シリーズが富野由悠季監督の手を離れ、アナザーガンダムや多種多様なコミカライズ、ゲームによって何十年も生命線を保ち続けているように、「エヴァも世界観と設定をオープンにして、新世代のトップランナーが自由に描くべきだ」という主張です。
山下いくと氏が手掛けた小説『新世紀エヴァンゲリオン ANIMA』のようなメカニック重視のスピンオフや、貞本義行氏によるコミック版の独自解釈が愛されてきた歴史を鑑みれば、「庵野秀明が作った世界という土台の上で、新しい才能が遊ぶ姿を見たい」と願う声もまた、偽らざる現場の実態と言えます。