ここ数年のタトゥーシーンを決定的に塗り替えたのが、単針(シングルニードル)を駆使したファインラインタトゥーの爆発的進化だ。かつては不可能とされていた髪の毛ほどの極細線で、繊細なタイポグラフィ・カリグラフィーを肌に定着させる技術が確立された。
この技法の魅力は、詩の一節や短文をまるで紙にペンで記したかのような繊細さで表現できる点にある。特にクラシックなカリグラフィーのペン先の強弱、インクの濃淡を忠実に再現したデザインは、従来のタトゥーが持っていた無骨なイメージを覆した。
ただし、繊細さには相応のリスクが伴う。線の細さは、彫師の針先の深度コントロールに極端な精度を要求する。浅すぎれば数ヶ月で消え失せ、深すぎれば皮下組織でインクが破裂する「ブローアウト」を引き起こして青くにじむ。ファインラインのレタリングこそ、最も高度な職人技が問われるジャンルなのだ。