岩井俊二監督の傑作『リリイ・シュシュのすべて』で主演を務めた当時、市原はまだ中学生だった。映画の中で彼が演じた蓮見雄一は、いじめや鬱屈とした日常の中で息を潜める繊細な少年。セリフこそ少なかったものの、その佇まいと、何かを諦めたような冷たい瞳は、当時の映画界に強烈なインパクトを与えた。
この作品で見せた儚さは、後の熱血漢キャラクターとは真逆の魅力に満ちている。光と影が交錯する美しい映像の中で、彼の存在自体がアートの一部となっていた。今振り返っても、あの時代の彼にしか出せなかった「痛々しいほどの美しさ」は、日本映画史における一つの奇跡と言えるだろう。