視界を支配する圧倒的な幾何学美。世界的な建築家・坂茂が手掛けたこの現代建築は、誰もが知る富士のフォルムを大胆にも逆さ吊りにしたような逆円錐形を誇る。地元・静岡県産の富士ヒノキを縦横無尽に編み込んだ繊細な格子。その木組みが水盤に反射した瞬間、鏡像となって現れるのは紛れもない「本物の富士」の優美な稜線だ。
「逆さ富士木格子プロジェクト」と称されたこの設計思想は、単なる視覚的トリックにとどまらない。地震大国日本において木造のしなやかさと最新の耐震工学を極限まで融合させた構造は、世界的な建築賞を総なめにしてきた坂茂の独創性の極致といえる。木材の温もりに包まれながら建物を仰ぎ見ると、ヒノキの微かな香りが鼻腔をくすぐり、人工物と自然の境界線がふわりと曖昧になっていく。