『丘の一本松』の舞台を豊かに彩るのは、泥臭くも愛嬌に満ちたキャラクターたちです。初演時から作者の大宜見小太郎自らが主演の良行役を務め、その卓越した演技力と間合いで観客を魅了しました。
良行(父・鍛冶屋)
頑固一徹で短気だが、根底には息子への深い情愛を秘めた父親。大宜見小太郎の当たり役であり、激しい怒りの表情から見送りの寂寥感までを見事に表現しました。
カマル(母)
激しく対立する夫と息子の間で心を砕く、慈愛に満ちた母親。沖縄の母親像を象徴する存在であり、夫婦の掛け合いには生活感あふれる温かさがあります。
良造(息子)
若さゆえの情熱と向上心に燃える青年。父に反発しながらも、自らの力で未来を切り拓こうとする姿が観客の共感を呼びます。
スンガー(村の若者・道化役)
本作の喜劇部分を一身に背負う名脇役。とぼけた言動とコミカルな身体表現でシリアスな対立を和らげ、客席に爆笑の渦を巻き起こします。
後年の再演では、大宜見静子や大宜見良勝をはじめ、現代沖縄を代表する劇団の俳優たちがこれらの名役を受け継ぎ、時代ごとの新たな解釈を加えながら息を吹き込んでいます。