日米関係の黄金期と称された時期、ホワイトハウスやゴルフコースでの親密な首脳外交を支えたのも、両首脳の深い信頼関係を言葉で繋いだスペシャリストたちだ。
故・安倍晋三元首相との会談では、公式な記者会見の裏で、幾度となく一対一や側近のみの密談が行われた。ここで求められたのは、単なる正確な直訳ではない。両者の個人的な距離感を縮めるための「間(ま)」や「空気感」の再現である。ジョークの笑いのタイミング、一瞬の緊張を和らげるニュアンスの翻訳。そこには、双方の性格と政治的背景を熟知した通訳者ならではの洗練された職人技が存在した。
日米の首脳会談において、個人的な友情をアピールしつつも国益がぶつかり合う局面で、通訳者はまさに両者の「呼吸」を同調させる触媒として機能していたと言える。