公的な電話窓口がパンク状態に陥るなか、個人や文化的アプローチによる独自の試みが大きな注目を集めてきた。作家でありアーティストの坂口恭平は、自身の携帯電話番号を公開し、生きづらさを抱える人々の声を直接受け止める「いのちの電話」を長年にわたり個人で実践してきた。行政の硬直化したシステムとは一線を画す彼の超個性的で即効性のある対話スタイルは、公的支援から溢れ落ちた人々にとって救済の糸口となり、既存の窓口のあり方に強烈な一石を投じた。
また、在宅医療と生命の尊厳を描いた映画『いのちの停車場』などの映像作品も、現代社会における「死にたい」という苦悩とそれを支える側の苦悩を立体的に浮き彫りにした。こうした表現活動は、単なる美談として終わらせるのではなく、社会全体でいかに他者の苦痛を分かち合うかという視点を私たちに提示している。