メインアリーナの照明が落ち、静寂が破られた一瞬の出来事だった。ゴングと同時に中央へ突っ込んだ挑戦者は、王者の出鼻をくじく左ストレートを一閃。わずか10秒で相手の膝が砕け、キャンバスに倒れ込んだ。レフェリーが抱きかかえるようにして試合を止めるまで、観客は何が起きたのか理解できなかったほどだ。
「この1分間のために、俺は毎日地獄の特訓を耐え抜いてきた」。マイクを握った新王者の目には涙が浮かんでいた。事前の煽り合いでは挑発的な言動を繰り返していた男が、試合後に見せたあまりにもピュアな素顔。このギャップこそが、観客を惹きつけて離さない魅力の真髄だろう。