お盆の期間中、先祖の霊に召し上がっていただく特別なお膳が「霊供膳(りょうぐぜん/れいぐぜん)」です。仏膳椀(ぶつぜんわん)とも呼ばれるこの漆器セットには、仏教の精神に則った厳密な献立ルールが存在します。
曹洞宗における霊供膳の献立は、肉・魚などの生ものを使用しない完全な精進料理(一汁三菜)が鉄則です。さらに、強い刺激や匂いによって修行の妨げになるとされる「五辛(ごしん=ニンニク、ネギ、ニラ、ラッキョウ、アサツキ)」も使用を避けます。出汁に関しても、煮干しや鰹節などの動物性素材は厳禁であり、昆布や干し椎茸から丁寧にとった出汁を用います。
五つの器への盛り付けと配置は以下の通りです。
- 飯椀(左手前):山盛りに盛った白米。
- 汁椀(右手前):お吸い物や味噌汁(具材は豆腐、ワカメ、麩など)。
- 平椀(左奥):煮物(大根、ニンジン、高野豆腐、椎茸など)。
- 壺椀(右奥):和え物やおひたし(ほうれん草の胡麻和え、白和えなど)。
- 高皿(中央):香の物(たくあんやきゅうりの浅漬けなど。2切れ盛るのが通例)。
ここで最も注意すべき配置のポイントは、「箸をご先祖様側(仏壇側)に向けて供える」という点です。私たちが手を合わせる側から見て、箸が奥側になり、手前に飯椀と汁椀が来る形になります。これは、あくまで「仏様に召し上がっていただく」というおもてなしの姿勢を示すためです。
続いて、お盆の始まりと終わりを告げる「迎え火と送り火」の手順を確認します。
【迎え火の手順(8月13日の夕方)】
夕暮れ時、玄関先や門口に「素焼きの皿(焙烙=ほうろく)」を置きます。その上で、皮を剥いだ麻の茎である「麻がら(おがら)」を井桁(いげた)状に組み、火を灯します。煙と炎が立ち上る中、家族で静かに合掌し、「ご先祖様、迷わずこちらへお戻りください」と祈りを捧げます。火が完全に消えたことを確認してから仏壇へ戻り、線香をあげて盆入りの挨拶をします。
【送り火の手順(8月16日の夕方)】
お盆の最終日、同じく夕暮れ時に玄関先で焙烙を用いて麻がらに火を灯します。「今年もお戻りいただきありがとうございました。道中気をつけてお帰りください」と感謝を込めて合掌します。この送り火の煙に乗って、ご先祖様は再び霊界へと帰っていかれます。