イェンセンの不等式を理解する第一歩は、数式を追うことではなく、グラフの「曲がり方」に目を向けることです。この不等式が成立する絶対条件は、対象となる関数が凸関数(下に凸)または凹関数(上に凸)であることにあります。
日常的な直感として、例えばお椀のような形をした「下に凸な関数」 $f(x) = x^2$ を思い浮かべてください。2つの点 $x_1 = 0$ と $x_2 = 4$ を選び、その平均値である $2$ を関数に入れると $f(2) = 4$ になります。一方で、先に関数を通した値 $f(0) = 0$ と $f(4) = 16$ の平均をとると $(0 + 16) / 2 = 8$ となります。結果を比べると、$4 \le 8$ となり、「平均してから計算した値」のほうが「計算してから平均した値」以下になることが分かります。
この性質を一般化したものがイェンセンの不等式です。凸関数と凹関数の違いを整理すると、以下の関係が常に成り立ちます。
・下に凸な関数(凸関数): $f(\text{平均}) \le \text{関数の平均}$
・上に凸な関数(凹関数): $f(\text{平均}) \ge \text{関数の平均}$
幾何学的に見れば、グラフ上の2点を結ぶ線分(割線)は、下に凸な関数では常にグラフの上側に位置します。内分点はこの線分上にあるため、グラフ上の点よりも必ず高い位置(あるいは同じ高さ)に来るという明快な幾何構造が、この不等式の核心です。