ネット上の掲示板やSNSでは、閉店した施設に対して安易に「万葉倶楽部は危ないのではないか」「秦野店が潰れたから連鎖倒産する」といった根拠のない憶測が書き込まれがちです。しかし、業界取材から見えてくる現実は真逆のシナリオでした。
当時、万葉倶楽部が進めていたのは不採算拠点や旧規格施設のスクラップ・アンド・ビルド(選択と集中)でした。1990年代後半に建てられたロードサイド型の温浴施設は敷地面積や動線設計に物理的限界があり、現代の顧客が求めるプライベート空間の確保や最新デジタルインフラの導入には限界がありました。
企業財務の観点から見れば、維持コストが嵩む秦野の拠点を適切なタイミングでクローズさせ、横浜や豊洲といった超一等地のメガプロジェクトへ資本を投下したことは、極めて合理的かつ堅実な経営戦略だったといえます。現に万葉倶楽部グループは倒産するどころか、首都圏有数の観光・温浴ブランドとしての地歩を一層強固にしています。「秦野館の幕引き=企業の衰退」と捉えるのは完全な誤解であり、時代の変化に適応するための事業ポートフォリオ再構築の一環だったのです。