石灰水とは、化学的には水酸化カルシウム(消石灰:化学式 Ca(OH)₂)を水に溶かした無色透明の水溶液を指します。理科の教科書では単に「石灰水」と表記されますが、その実体は極めて溶解度の低い石灰水飽和水溶液です。
文部科学省の学習指導要領や各種化学便覧のデータによると、水酸化カルシウムの溶解度は20℃の水100gに対してわずか約0.17gしかありません。つまり、コップ1杯(約200ml)の水に対して耳かき数杯程度の粉末を入れるだけで、水溶液としては飽和状態(限界まで溶けた状態)に達します。溶け残った白い粉末は水底に沈殿するため、上澄み液だけを回収するか、ろ過して透明な液体を取り出す必要があります。
石灰水に息を吹き込んだり二酸化炭素を通したりすると白く濁るのは、水酸化カルシウムと二酸化炭素が化合して、水に極めて溶けにくい「炭酸カルシウム(CaCO₃)」の微粒子が生成されるためです。この一連の化学変化を炭酸カルシウム沈殿反応と呼びます。
Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃↓ + H₂O
さらに二酸化炭素を長時間吹き込み続けると、白濁した液体が再び無色透明へと戻る現象が観察されます。これは炭酸カルシウムが水と二酸化炭素によって水溶性の「炭酸水素カルシウム(Ca(HCO₃)₂)」へと変化するためです。この可逆的な反応サイクルこそ、自然界における鍾乳洞の形成や石灰岩の浸食メカニズムそのものであり、理科実験における最大の観察ポイントとなっています。