両親の法廷闘争の最大の犠牲者となったのは、多感な思春期を過ごしていた渡辺大と妹の杏でした。豪邸は差し押さえられ、水道やガスなどのライフラインが止められるほどの極貧生活へ転落。さらに学校内では「親が同級生から借金をしている」という噂が広がり、孤立を余儀なくされます。
高校3年生だった渡辺大は2002年、月刊誌『文藝春秋』に「父・渡辺謙への手紙」と題した手記を寄せました。「せめて学費だけでも払ってほしい」という切実な叫びと、家庭を捨てて去っていった父親への怒りや失望を赤裸々に告発したこの文章は、世間に大きな衝撃を与えました。
一方、妹の杏もまた過酷な現実と向き合っていました。学費を工面できないことから名門私立高校を自ら中退。居酒屋でのアルバイトなどを掛け持ちしながら、母が背負った約2億円にのぼる借金の返済を肩代わりすることを決意します。モデルとして頭角を現し、パリコレクションの舞台に立つトップモデルへ駆け上がった背景には、「母の借金を一日も早く返し、生活を立て直さなければならない」という鬼気迫る覚悟があったのです。