南青山という日本有数の商業発信地にありながら、根津美術館がこれほどまでに熱烈な支持を集め続ける決定的な要因は、「展示品」「現代建築」「日本庭園」の3要素が奇跡的な調和を遂げている点にあります。初代根津嘉一郎が蒐集した東洋古美術コレクションは、絵画、書蹟、彫刻、陶磁、漆工、金工など多岐にわたり、国宝7件、重要文化財89件を含む約7,400件を数えます。
その至高のコレクションを包み込むのが、建築家・隈研吾氏の手による本館です。表参道の交差点から伸びるみゆき通りの突き当たりに位置するアプローチは、竹林に沿って伸びる屋根付きの細長い回廊(キャノピー)となっており、隈氏自身も過去の解説やインタビューにおいて「都市の喧騒から精神的な静寂へと鑑賞者を導くための結界(アプローチ)」と表現しています。薄い大屋根が和の陰翳を演出し、ガラスの開口部からは後述する広大な庭園の緑が借景として飛び込んできます。
商業主義が加速する表参道エリアにおいて、敷地面積約17,000平方メートル(約5,000坪)におよぶ広大な敷地を贅沢に維持し、茶道精神に基づいた「もてなしの美学」を空間全体で体現していることこそ、根津美術館の人気が一時的なブームにとどまらない最大の理由です。