初めて味噌煮込みうどんを食べる県外の来訪者から最も多く聞かれるのが、「麺に芯があって生煮えではないか」という疑問です。しかし、この独特の硬さには、伝統的な製麺技法と調理科学に基づく明確な必然性があります。
塩を使わずに打つ「生麺(きめん)」の秘密
一般的なうどんは、生地のグルテンを強化してコシを出すために多量の塩分(食塩水)を加えて練り上げ、茹で上がった後に水で締めて塩分を抜きます。一方、本格的な味噌煮込みうどんの麺は塩を一切使わずに小麦粉と水だけで手打ちされます。塩分を含まない麺をそのまま熱々の味噌出汁に投入して煮込むため、表面が溶け出さず、濃厚なスープを吸い込みながらも中心部にしっかりとした力強い歯ごたえを残すことができるのです。
土鍋の蓄熱性と八丁味噌の耐熱性
愛知県特産の八丁味噌は、大豆と塩のみを原料に2夏2冬以上じっくり熟成させる豆味噌です。加熱しても香りが飛びにくく、煮込めば煮込むほど旨味成分(グルタミン酸)が引き出される特性を持っています。蓄熱性の高い土鍋の中で激しく沸騰させても麺がダレず、最後まで芯のある食感をキープできるのは、この豆味噌と無塩生麺の組み合わせがあってこそ成立する技術です。