古くから民間伝承として、「鼻の頭にニキビができると両思いになれる」「鼻の下の吹き出物は金運の低下や思わぬ出費の予兆」といった鼻周りニキビジンクス意味が広く語り継がれてきました。占いや心理的なエンターテインメントとして消費される分には無害ですが、これらを医学的な兆候と混同して放置することは看過できません。
報道機関や医療関係者が警鐘を鳴らし続けているのが、「ニキビだと思い込んでいたら、実は極めて危険な感染症である面疔(めんちょう)だった」という誤認の恐怖です。
医学的に、眉間から上唇の両端を結ぶ三角形のエリアは「顔面の危険三角(デンジャー・トライアングル)」と呼ばれています。この部位の静脈系には静脈弁が存在せず、頭蓋骨の内部にある「海綿静脈洞」へと直接つながっています。通常のニキビであれば毛包内のアクネ菌が主犯ですが、面疔は黄色ブドウ球菌などが毛包深部に侵入して広範囲の蜂窩織炎(ほうかしきえん)を引き起こします。
もし鼻周りの赤い腫れ物が、「触れなくてもズキズキと激しく痛む」「硬いしこりのようになっており芯が見当たらない」「微熱や頭痛を伴う」という状態に発展している場合、それは一般的な吹き出物ではありません。無理に指で押し潰すと、病原菌が血流に乗って頭蓋内へ逆流し、最悪の場合は海綿静脈洞血栓症や髄膜炎といった重篤な合併症を引き起こす危険性があります。ロマンチックなジンクスに惑わされず、病態の境界線を冷徹に見極めるリテラシーが求められます。