ネット上の簡易的な解説記事では、「デカルコマニーは絶対に左右対称(シンメトリー)になる技法」と画一的に説明されることが少なくありません。しかし、これは造形教育の観点から見ると大きな誤解であり、現場での指導を窮屈にする原因にもなっています。
実際には、紙を開くときの力の入れ具合や角度、絵の具の粘度のムラ、紙を剥がすスピードによって、左右で全く異なる模様や毛細管現象のような筋(フラクタル構造)が生まれます。エルンストをはじめとするシュルレアリストたちが魅了されたのも、完全な幾何学的対称性ではなく、その「ズレ」が生み出す有機的な歪みでした。「左右が同じ形にならなかった」と落胆する子どもに対して、「見てごらん、右側は鳥が羽を広げたみたいで、左側は木が伸びているみたいだね」と声をかけられるかどうかが、子どもの表現力を伸ばす分岐点となります。
また、「筆を使わなければならない」という思い込みも捨てるべきです。乳幼児の場合、指先に絵の具をつけて画用紙にスタンプするフィンガーペインティングの手法を取り入れたり、ジッパー付き保存袋に画用紙と絵の具を入れて袋の上から揉ませたりすることで、手や衣服を一切汚さずに安全にデカルコマニーの醍醐味を味わうことが可能です。