「想い出の糸車」を語る上で欠かせないもう一つの重要なトピックが、劇中で「飾り職人の秀」を演じた三田村邦彦によるカバーバージョンの存在です。
秀は、簪(かんざし)を武器に悪人の喉笛を刺し貫く若き仕事人であり、その端正なルックスと心優しい内面のギャップで、当時の若い女性層を中心に絶大な人気を獲得しました。そんな三田村自身がレコーディングした「想い出の糸車」は、新妻勝江のオリジナル版とは趣を大きく異にしています。
新妻版が「空の上から彷徨える魂を見つめるような母性的・無償の祈り」であるとするならば、三田村版は「自らの手を血で汚してしまった当事者(秀)が、夜風の中で吐露する痛切な後悔と孤独」です。少し低めで温かみのある三田村の歌声は、劇中の秀の横顔そのものを想起させ、ファンの間では「どちらのバージョンも甲乙つけがたい傑作」として愛され続けています。
2020年代から2026年にかけて、主要音楽ストリーミングサービス(Spotify、Apple Music、Amazon Musicなど)で必殺シリーズのオリジナル・サウンドトラックがカタログ配信されるようになると、ネット上のコミュニティでも再び熱狂的な議論が交わされるようになりました。
SNSや動画共有プラットフォームにおけるリスナーの生の声を集約すると、以下のような傾向が顕著です。
- 「令和の世になっても、これほど胸に染み入るメロディと歌詞は存在しない」
- 「新妻勝江さんのビブラートをかけすぎない真っ直ぐな歌声が、逆に残酷な運命を際立たせている」
- 「秀の生き様とリンクして、三田村邦彦版を聴くと涙腺が崩壊する」
- 「時代劇を観たことがない20代の自分でも、イントロのギターだけでノスタルジーに浸れる」
このように、親世代のリアルタイム体験から子の世代への継承、さらにはレトロカルチャーとして昭和歌謡を掘り起こす若年層の評価が重なり、現在も新たなリスナーを獲得し続けています。