日本国内で長年抱かれがちな最大の誤解が、曲名にある「Last」の解釈です。「ラスト=人生最後、あるいは今年で最後」と受け取られがちですが、英語圏における「Last Christmas」の正確な意味は「去年のクリスマス(前年のクリスマス)」を指します。つまりこの楽曲は、過去の苦い記憶を回想しながら、今年の決意を語るモノローグ(独白)の形式をとっています。
歌詞の主人公は、ちょうど1年前のクリスマス、すべてを捧げる覚悟で相手に愛を告白しました。ところが、そのわずか翌日(ボクシング・デーにあたる12月26日)、相手はその想いをあっさりと捨て、別の誰かのもとへと去ってしまいます。一年が巡り、再びやってきたホリデーシーズン。主人公は「もう二度と涙を流さないために、今年は本当に自分を大切にしてくれる特別な人に心を捧げるんだ」と自分に言い聞かせます。
きらめくベルの音や甘いコーラスの質感とは対照的に、描かれているのは「一途な愛の搾取」と「裏切りから立ち直ろうともがく葛藤」です。この強烈な明暗のコントラストこそが、楽曲に底知れぬ深みと中毒性を与えている決定的な要因といえます。