劇中で宗介が大切にしていたおもちゃのポンポン船は、一般にスチーム推進ボートや振動水流エンジンと呼ばれる古典的な熱機関です。電池やモーターを一切使わず、わずかなろうそくの熱だけで推進力を生み出す驚きのメカニズムを持っています。
このエンジンの心臓部は、内部が中空になった金属パイプ(または平たい金属ボイラー)です。管の中に水を満たした状態で底面からろうそくの火で加熱すると、以下のようなサイクルが連続して発生します。
- 加熱と水蒸気化:パイプ内部の水が沸騰し、一瞬で体積が約1,700倍の水蒸気に膨張します。
- ジェット噴射:膨張した水蒸気の圧力により、パイプ後方のノズルから水が一気に勢いよく押し出され、その反動で船が前進します。
- 減圧と吸水:パイプ内の水が排出されると急激に冷却され、水蒸気が水に戻ることで内部が真空(負圧)状態になり、周囲の水が再びパイプ内に吸い込まれます。
- サイクルの反復:吸い込まれた水が再び加熱され、瞬時に次の噴射が発生します。
この膨張と収縮のサイクルが1秒間に数十回から数百回という超高速で繰り返されることで、船尾から連続的な推進水流が生み出されます。船体から鳴り響く「ポンポン、ペタペタ」という小気味よいリズミカルな作動音は、ボイラーの薄い金属板が圧力変化によって振動する音や、ノズルから水が間欠的に噴射される音に由来しています。