可逆計算の概念が最も自然に、かつ強力に実装されている現場が量子コンピューティング産業だ。量子力学に従う純粋な量子状態の遷移は本質的に「ユニタリ変換」であり、測定によって波束が収縮しない限り、すべての演算は可逆的に元へ戻せる。IBM Quantumをはじめとするグローバル巨頭が開発を急ぐ量子プロセッサは、この可逆性を土台にして並列計算の爆発的な計算能力を引き出している。
日本国内でも産業技術総合研究所などが先導し、極低温環境下における超伝導回路を用いた可逆論理回路や量子・古典ハイブリッド基盤の研究開発が急ピッチで進む。シリコンの微細化競争から、熱力学的効率と量子可逆性を武器にしたアーキテクチャの競争へ。ゲームのルールは完全に変わりつつある。