物語の中盤、キキは突然ホウキで空を飛ぶ力を失い、ジジの言葉も理解できなくなります。このキキの魔法が弱くなった理由について、作中では明確な病気や呪いとしては描かれていません。最大の要因は、見知らぬ街での生活による疲弊、人間関係のすれ違い、そして自分自身の存在価値を見失ったことによる「アイデンティティの揺らぎとスランプ」です。
魔女の力は特別な超能力ではなく、思春期の少女が持つ才能や感受性のメタファーとして描かれています。絵描きウルスラが語る「描けなくなったら、もがいてみるしかない」という言葉通り、才能を持つ者が誰しも直面する挫折の時期を表現しています。
さらに多くの視聴者が衝撃を受けるのが、ジジが話せない理由です。ラストでキキは再びデッキブラシで空を飛べるようになりますが、ジジの鳴き声は「ニャー」のままで、二度と会話が成立することはありません。
これについて宮崎駿監督は、制作当時のインタビューで「ジジの声はもともとキキ自身の内面(もう一人の自分)であり、キキが成長して他者と向き合えるようになったことで、自分だけの殻から抜け出した」という趣旨を明かしています。ジジが普通の猫に戻ったのは魔法が消えた罰ではなく、キキが一人の自立した女性へと一歩を踏み出した証拠です。