黒死病とは何か?中世欧州壊滅の真相と現代に残るペストの脅威とはどのようなものなのか? 詳しい意味を整理してお届けします。
黒死病と総称されるペストですが、臨床的には侵入経路や発症部位によって主に3つの病型に分類されます。中世の流行で多数を占めた「腺ペスト」と、極めて強い感染力を持つ「肺ペスト」、そして血液中に菌が侵入する「敗血症ペスト」です。
とりわけ腺ペストと肺ペストの違いを把握することは、感染制御の観点から極めて重要です。腺ペストはノミによる刺傷や小傷からの菌侵入が中心で人から人への直接飛沫感染は起きませんが、肺ペストは咳やくしゃみを介した飛沫によって猛烈な勢いでヒト同士の感染が連鎖します。
病型主な感染経路・メカニズム特徴的な初期〜重症化症状未治療時の致死率腺ペスト
(全体の約8〜9割)感染したノミ(ケオプスネズミノミ等)の刺咬、保菌動物の体液接触突然の悪寒・高熱、鼠径部や腋窩のリンパ節腫脹(横痃:おうげん)と激痛50%〜70%
(近代以前は数日で死に至るケースが頻発)肺ペスト
(原発性および続発性)感染者の咳や喀痰による飛沫感染、腺ペスト菌の血行性肺転移激しい咳、血痰、高熱、急速に進行する呼吸困難と多臓器不全ほぼ100%
(発症後24〜48時間以内に死に至る)敗血症ペストノミ刺咬から直接血管内へ侵入、または他病型の末期悪化局所のリンパ節腫脹を伴わず、全身播種性血管内凝固(DIC)、壊死、昏睡ほぼ100%
(電撃的な経過をたどる)
中世の記録において「朝元気だった者が、夕方には棺に納められていた」と表現される急死のケースは、肺ペストの飛沫感染や敗血症ペストを発症した事例であったと考えられています。