憲法改正論議には、多くの有権者が勘違いしやすい盲点が存在します。
第一に、「国民投票に最低投票率の規定がない」という点です。どれほど投票率が低くても、投票者の過半数が賛成すれば憲法は改正されます。組織票を持つ団体が優位に働く可能性があり、無関心層の棄権がそのまま結果を左右します。
第二に、「一括投票ではなく項目ごとの個別投票である」という点です。発議の際、関連する事項ごとに「憲法改正原案」が区分され、有権者は項目ごとに個別に〇×を投じる仕組みになっています。「緊急事態条項には賛成だが、9条改正には反対」という投票が制度上可能です。
【プロの結論】感情的な二項対立を超えて有権者が持つべき判断基準
憲法論議は長年、「護憲=平和愛好」「改憲=好戦的」あるいは「改憲=現実主義」「護憲=空想平和主義」といった単純なラベリングと感情的な二項対立に陥りがちでした。社会心理学的に見ても、アイデンティティに基づく所属バイアスは建設的な対話を妨げます。
有権者に求められるのは、「誰が提案しているか」ではなく「提示された条文が統治権力への適切な歯止め(立憲主義)として機能しているか」を冷静に査定する姿勢です。国家の存立と個人の尊厳・自由のバランスをどこに置くか、冷徹な法文読解が求められます。